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スキー競技部
2015.07.13

クロスカントリー 恩田祐一選手


 5月19日に、クロスカントリースキー日本代表として3大会連続で冬季五輪に出場した、近畿大学体育会スキー競技部OBの恩田祐一選手(平成15年度商経学部卒・現アークコミュニケーションズ)が、卒業以来11年ぶりに母校近畿大学を訪れました。恩田選手は、2014年ソチ五輪終了後に、スキーからマウンテンバイクへ競技転向を表明。現在は、マウンテンバイク競技で夏季五輪出場を目指し、日々トレーニングされています。そこでキンスポは、恩田選手の来校に合わせ、競技転向やリオ五輪への思い、近畿大学での思い出を聞きました。




恩田祐一


恩田祐一(おんだ・ゆういち)

1980年6月24日生まれ、新潟県出身。近畿大スキー競技部OBで、商経学部(現経営学部)を平成16年3月に卒業。株式会社アークコミュニケーションズ所属。




日本のクロスカントリースキーの第一人者で、2006年トリノ五輪、2010年バンクーバー五輪、2014年ソチ五輪と3大会連続で冬季五輪に出場。クロスカントリースキー・ワールドカップでの4位は、日本人歴代最高順位。2007年のアジア競技大会、個人スプリントの金メダリスト。近畿大在学中には、全日本選手権でスプリントと50kmクラシカルの2種目を制覇。現在は、マウンテンバイク競技に転向し、リオ五輪を目指しながら、国内のスキーの大会にも出場している。直近の全日本選手権ではマウンテンバイクで5位、スキーで11位に入っているなど、二刀流を体現。





“卒業以来、11年ぶりの近大”
































――最後に近大を訪れたのはいつですか?
恩田  卒業以来、来ていないから、平成16年の3月以来ですね。
――恩田選手が学生のころと近畿大学の風景は変わっていますか?
恩田  校舎もきれいになっているし、大学通りも変わっていました。でも、キッチンカロリーや松屋は僕の頃もありましたね。
――どんな大学生活を送られていましたか?
恩田  夜間部だったので、昼間の時間に学校に来たことがなかったので、今日みたいに昼の大学を味わえなかったのが心残りですね。でも、授業は、ちゃんと受けていた方だと思います。今でも、中国語の授業を覚えています。毎授業、最後に中国語で発表があるから、一番真面目に受けたなと自信を持って言えますね。 “私はあなたの事が好きです”それだけは覚えています。遠征先で使ったことはないですけどね(笑い)。
――スキー競技部での思い出は?
恩田  寮生活ですね。当時は40名弱部員がいて、ワイワイやって毎日が合宿でしたね。1、2年生の頃は、食当(食事当番)があって、食事を人数分作ったりして、その買い出しとか大変だったけど楽しかったですね。いい意味で上下関係を学べて、挨拶など社会に出てからそれが生きて、今思うと良かったなと思います。


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これまではクロスカントリーで世界を舞台に勝負してきた恩田選手



“夏のオリンピックに出てみたい”










































































――卒業して今なお、現役で競技を続けられる理由は?
恩田  ちゃんとした明確な目標があったから、そこに向けて毎日一生懸命取り組んできたその積み重ねだけですね。スキーをやっていた時は、オリンピックを目指して、世界一位になりたかったというのがありました。そこに向けて、必死に突っ走ってきただけだと思います。
――スキーからマウンテンバイクに競技を変えた理由は?
恩田  ソチのオリンピックが終わった時に、夏のオリンピックに出てみたいなと思って。過去に夏季と冬季の五輪両方に出場した日本の選手は4人いるから、ソチ五輪後すぐに、その中の一人になりたいなと思い…そうなったら止まらなくなっちゃって。根っからの負けずぎらいなんでね(笑)
――マウンテンバイクとの出会いは?
恩田  自転車自体は、ずっとトレーニングに取り入れていて、マウンテンバイクの試合に出場し始めたのは、ソチの前のオリンピック。2回目のオリンピック(バンクーバー)が終わったシーズンから、自転車のレースに出場するようになっていました。
――どうして試合にでるようになったのですか?
恩田  高校の同級生に、スキー競技からマウンテンバイクに転向した選手(斉藤亮選手)がいて、いい練習になるから出てみればと言われて、じゃあ出てみようかなって。簡単に通用すると思っていたけど以外と難しくて…こんな人に負けないだろうと思っていた人に平気で負けたのでそれが悔しくて。
――競技転向は自然な流れだったのですか?
恩田  僕の中では、自然な流れといえば、自然な流れですね。周りから見たら、冬から夏の競技なので、どう思われるかわからないですけど、他の人がやる訳ではなくて、自分自身がやるので、何言われても、止めようとは思わなかった。夏のオリンピックに出たいと思ってしまったので。
――今はスキーがマウンテンバイクのための練習になっていますね。
恩田  スキーの国内のレースには出ているので、出るからには負けたくないというのがあるので。ただスキーに向けてのトレーニングは夏できないので、現状難しいですけど、国内のレースは頭を取るつもりで取り組んでいます。
――マウンテンバイクとスキーの二刀流ですね。
恩田  二刀流と言われると、そうでもないけど、、、、。あっ、でも二刀流か(笑い)。
――使う筋肉もマウンテンバイクとスキーでは違いますか?
恩田  マウンテンバイクでは下半身が重要になってくるので、クロスカントリースキーでは上半身の動きがメインなので違いますね。
――マウンテンバイクで役立ったスキーの能力はありますか?
恩田  どちらとも登ったり下ったりするので、コースのプロフィール(設定)が近いので、コースを把握するといった点では武器になっています。
――マウンテンバイクの魅力は?
恩田  レースは苦しくて、辛いですけど、山の中を自転車で走るというのは、ものすごく気持ちいいですね。アスファルトの上では感じられない、自然を感じられるので、その辺は純粋に楽しいなと思いますね。レースになるとそれは違ってきますけど、スキーの時もそうですけど、練習すればした分だけ、自分に還ってくる。練習すれば結果も上がってくるので、そういった点では、わかりやすい競技ですね。


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マウンテンバイクに競技転向し自転車で山を駆け下りる恩田選手



“再び五輪へ、あの場に帰りたい”







































――リオ五輪出場への目標は?
恩田  日本の出場枠の選考が始まっていて、まず日本の枠を確保しなきゃいけないので、それに僕も貢献できるようにしたい。枠が確保できたら、その枠に入りたいので、すごく厳しいと思うんですけど、可能性はゼロではないから。少ない可能性だとしても、それにチャレンジしたい、やっぱり出たい。あのオリンピックの雰囲気は出た人にしかわからない場所ではあるので、もう一回あの場に帰りたいなと思います。
――東京での五輪開催が決まりましたね。
恩田  大きな目標として東京オリンピックは目指したいなと思いますけど、今年で35になるので、決して若いとは正直言えないので、僕の中にも時間の猶予があるとは思ってないから、東京というよりリオ。そこで、可能性がその先もあるっていうとこまでいかない限りは、東京ってのは目指すべきではないとは思うので、中途半端にやるつもりはないから、ほんとに自分が競技生活をやっているなかで、日本でオリンピックやるなんて、なかなかそんなのに出くわすことはないので、ぜひとも出たいなとは思いますけど、まずはリオの事しか今頭にないから、そこに全力を注ごうと思っています。
――オリンピックのイメージはどこまでできていますか?
恩田  現段階だったら、厳しい戦いになるとわかっているので、トレーニングを積んでいけば届かない場所ではないなって。
――その時にスキーで得た経験が活きてきますか?
恩田  オリンピックに出る厳しさはスキーで味わっているので、中途半端な覚悟で競技を転向したわけではないので、他の選手より覚悟はあると思います。他の選手より本気度は違うとは思います。
――夏は近畿大学から多くの選手が出ていますね。
恩田  近大は、夏はたくさんメダルを取っているので、その中に入れたらいいなと思います。


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コースを疾走する恩田選手


“学生生活を楽しんでほしいな”














































――五輪に出場したアスリートとして、スポーツをしている学生へメッセージをいただけますか?
恩田  明確な目標を見つけて、それに向かってほんとに頑張ってほしいなと思います。近大は、スポーツに理解がある学校だと思う。学業はもちろん僕の在学中にもスキーに集中できる環境を与えてくれて、本当に感謝しています。だからこそ、学生でスポーツをやる選手は、感謝の意味も込めて全力でやってほしいな。中途半端にやらないで全力でやってほしい。そしてやるからには、オリンピックを目指してほしいなというのはあります。
――プレッシャーの克服方法などはありますか?
恩田  ソチの前なんかにプレッシャーがなかったかといえば、嘘になるし、緊張ももちろんします。だけど、誰かのためにやっているわけではないから、自分のためにしかやってきてないし、ただ日の丸を背負うって、限られた人しかいないので、すごいプレッシャーではありましたけど、逆に光栄なことだとポジティブに考えていました。
――海外での試合はどのようにして臨まれていますか?
恩田  海外でのレースは慣れだと思います。食文化も違いますし、人それぞれですが、僕は現地の食文化に合わせるようにしています。あえて日本から何かを持って行って、僕はこれがないからレースができないという形にはしないで、パンが食文化の国ならパンでレース前に調整しています。米じゃなきゃだめっていう風にしちゃうとそれだけでメンタルが整わないので、現地の食で合わせるようにしていました。それも慣れだと思うので、慣れていくしかなかったですね。例えばウォーミングアップも、こうじゃなきゃダメだってつくっちゃうと、なかなかそれが出来ない環境もあるので。とにかく対応力みたいなものが自分の中にはあって、臨機応変に対応できた。これっといったルーティーンはなかったですね。レースの時間も試合によってそれぞれ違うし、夕方やるのもあったら朝早くやるのもあるので、そのときそのときに柔軟に対応はしていましたね。
――恩田選手の武器の一つは対応力ということですが他に武器はありますか?
恩田  やっぱり覚悟といか、どこを目指しているのか、その目指しているところにどれだけ覚悟を持って取り組めるか。メンタルだと思います。自分はここまで行きたいんだという強い思いがあれば、そこに向けて取り組むと思うので、その目標設定というか、目標が大事なのかなと思います。
――一般の学生にオリンピアンの先輩からメッセージはありますか?
恩田  学生生活を楽しんでほしいなというのはありますね。今振り返ると、大学生というのをもっと楽しめたらよかったかな、そういう余裕が持てなかったので。
――恩田選手のレースのここをみてほしいというのはありますか?
恩田  レース会場に来てくれればありがたいですけど、少しでも僕の存在を気にかけてくれれば、会場に来なくても応援というのが選手には一番力になるので、少しでも気にかけてくれたらうれしいですね。


恩田選手は、7月17日~7月19日に開催される第29回全日本マウンテンバイク選手権大会に出場予定です。この大会は、世界選手権代表候補選手の選考も兼ねて行われます。

【聞き手・構成】近大スポーツ編集部



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